2018年を迎えて

2018年1月22日

2018年を迎えました。

毎年、新たな年を迎えるたびに思います、今年も平和で穏やかな一年であってほしいものだと。その気持ちは誰しも同じことです。あちらこちらの神社に訪れた初詣の人々は今年も大勢でした。そして賑やかでした。

初詣の帰りに「お屠蘇」と称して親しい友人と一杯やりました。

今年も平和に!という話が弾んで、ずっと続くこの平和の基は何だ?という話になって、「憲法」だろう、という意見と、いや「日米安全保障条約」だろう、という意見と極端な二極に割れました。

確かにいわゆる「平和憲法」の理念が戦後日本を一貫して戦争から遠ざけてきたと言えるでしょう。それは確かです。一方、現実をみると、海を隔てたすぐ隣にロシア、中国、朝鮮半島と対面しています。どちらの国々も外交と戦争とが表裏で繋がっている容易ではない国々です。理念だけでまともに過ごせるとは決して思えません。

最近、改めて「憲法改正」の話が出ています。日本が置かれた地政学的状況からすれば、70年ほど前の米軍占領下という異常な環境のなかで、米軍将校らによって数週間で原案が作られたという現憲法です。これを現状に照らして見直すという作業は是非必要といえます。少なくとも、これに手を染めてはいけない!といった風潮があることは異常です。「改正」するもどうするも国民が決めることです。国会だけで決められるわけではありません。ジャーナリズムが率先して議論の先鞭をつけるべきところ、その議論すら避ける風潮があることは異常といわざるをえません。自分はそう思います。

憲法といえば聖徳太子の十七条憲法が日本における憲法の嚆矢といっていいでしょう。あまりにも古い話でその真実の程は分かりません。本当に聖徳太子が作ったものなのか?それ自体も疑問が多いとされています。ただ、日本書紀の記述を信ずれば推古十二年(604年)に聖徳太子がこれを作ったとされているようです。

十七条憲法は特に第一条が有名です。「和をもって尊しとなす」というものです。

この十七条憲法はもともと群卿百寮に対するものといえ、いわば諸豪族や諸役人に対する一種の服務規範といったものといえます。

そこに「和をもって・・・」として豪族や役人たちの融和を図っていることが当時の事情をあぶりだしているとも見えます。

ただ、そのあとに「さからうこと無きを宗となす」とあります。

「むさぼりを絶ち欲を捨て(第五条)、いかりを絶ちいかりを棄て(第十条)」

ともあるように穏やかな精神と平静な心を求めていたことが理解できます。為政者にとって、そうしたメンタルを特に必要とした当時の事情がそこから伺えます。

第二条が「篤く三宝を敬え」です。三宝とは仏、法、僧です。

当時大陸からもたらされたばかりの仏教を厚く尊重しています。聖徳太子は勿論のこと、当時の政治権力のトップにいた大臣蘇我馬子も仏教導入の急先方でした。当時の最先端文化と言える仏教の教えを役人たちの服務規範として掲げたところにも、聖徳太子を初めとする当時の人々の新国家創造への熱い思いが伺えます。

ここで最後の条文である第十七条を見てみます。

「大事は独り断ずべからず、必ず衆とともに宜しく論ずべし」

とあります。

ここでようやく実務的な話になってきました。精神的な服務規範だけでなく役人や豪族たちの議論の進め方、仕事の進め方を諭しています。独断で勝手に進めるな!関係する各々の人々とよく話し合って進めなさい、というものです。

非常にわかり易い話です。

似たような文章があります。明治維新の頃、慶応4年3月に明治天皇が掲げたいわゆる「五箇条のご誓文」です。

これが明治政府の基本方針となって明治憲法に反映されているようです。

第一条 「広く会議を興し万機公論に決すべし」

とあります。

「ことに当たって人々の間でよくよく議論して進めなさい!」というものです。

明治憲法も聖徳太子の十七条憲法もその理念とするところは同じです。

話によれば幕末、坂本竜馬が船中で後藤象二郎に語ったといういわゆる船中八策にある「万機宜しく公儀に決すべし」との文言が五箇条のご誓文第一条に反映されているという話も余計な話ですが面白いです。

更に余計な話です。昭和21年の昭和天皇によるいわゆる人間宣言において五箇条のご誓文が全文引用されているようです。明治以来、日本は国体としてこうした民主主義的な考えを持ち続けてきたとの昭和天皇の強い思いからのようです。

それは、明治以来というよりも遥か1400年前の十七条憲法にも見られるように我が国の為政者に綿々と引き継がれてきた国家運営の基本理念、共通認識といっても言い過ぎではありません。

このようなことから、我が国の基本法である憲法を神棚に祭りあげ議論から遠ざけるのではなく、こうした歴史的背景を踏まえた冷静な議論の中で今一度見直されることが望まれます。今はそうした落ち着いた議論が可能な大人の社会になっていると期待したいです。

 

話があちこちに飛びました。お屠蘇が大分回ってきたようです。

もうすぐ2月です。韓国では平昌オリンピックです。北朝鮮が代表団を送るとかでニュースを賑わしています。事によってはオリンピックの後、世界に大きな波が起きるかもしれません。

穏やかな年は儚い初夢に終わるかもしれません。そうならないよう祈るのみです。